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敷島製パン株式会社様

製造業

精緻な需要予測に基づく
最適な生産計画と輸送体制で
利益を重視する経営へ

フューチャーアーキテクト株式会社
黒田 真一
1999年に入社。製造業、金融業など
様々な分野での経験と実績を持つ。
敷島製パン株式会社は、売上重視の体質から脱却し利益重視の経営へと変革するための全社的な改革を敢行した。
業務とシステムをゼロベースから見直し、販売チャネルや嗜好の多様化への柔軟な対応やAIを活用した需要予測などを積極的に取り入れた新システムを構築。
40年以上使い続けビジネスの制約となっていたホストシステムを撤廃した。
Project Outline

プロジェクト概要

シェアNo.1の食パン「超熟」で親しまれている敷島製パン株式会社(以下敷島製パン)は、2020年に創業100周年を迎える。それを機に、これからの持続的な発展のため、経営陣は「売上よりも利益を追求する経営」へと大きく舵を切り、2011年から5年にわたって全社一丸での改革プロジェクトを主導した。フューチャーアーキテクトは経営・業務・ITを一体に捉えた敷島製パンの大改革を推進するパートナーとして、構想段階から本プロジェクトに参画。ゼロベースで業務を見直して最適化・簡素化を図り、AIを活用した需要予測や最適な生産振分をはじめ、営業から製造・物流にいたるまで一気通貫で利用できる新基幹システムを構築した。

お客さまの課題
  • 売上重視の営業スタイルによる収益力の伸び悩み
  • プロフィットセンターが営業部門と製造部門に2分化
  • 小売り業態の変化や多様化する消費傾向への不十分な対応
  • 40年にわたり改修を重ね仕様を把握できていないシステムのリプレース
効果・メリット
  • 精緻な需要予測に基づく最適な生産計画と輸送体制を構築し、コストを削減。仮説を立てて実行に移すプロセス重視の営業スタイルに移行することで、利益追求型の経営に転換した。
  • エリア単位、工場単位でバラバラだった業務を標準化し、バックオフィスも一本化。全社でオペレーションを統一し予実管理を徹底することで、全社的な営業力と収益力を強化した。
  • 複雑でブラックボックス化していたホストシステムを撤廃し、オープンテクノロジーをベースとしたリアルタイム性の高いシステムに全面刷新。特定のベンダーや技術に依存せず、市場の変化に迅速かつ柔軟に対応できるようにした。

コンビニや大手チェーン店など販売チャネル拡大
市場の変化に対応するための改革

敷島製パンは、国内に15ある工場で1,000種を超えるパンや和洋菓子を製造し、全国55,000以上の小売店に毎日届けている。かつての特約店制度のもとでは、契約店舗に卸せば定価で売れたので、長年にわたり売上が重視されていた。ところが、現在ではコンビニや大手チェーン店などへの販売が半数を超え、市場は大きく変化した。プロジェクトのリーダーを務めた黒田真一は次のように話す。

「日配食品製造の市場は、ここ数十年で劇的に変わりました。いまは販売チャネルが多様化しているし、購買者の嗜好もさまざまで、ニーズへの対応も複雑になっています。動きの速い小売業界では、こうした変化にいち早く対応しなければなりません。今後を見据えビジネス環境に柔軟に対応していくためには、利益構造をシンプルに可視化し、利益を生み出す活動の意思決定を迅速に行えるようにすることが重要でした」

ある業務やシステムを変えるという部分最適ではなく、経営、業務、システムをすべて変えなければならないと経営陣が決断し、全社改革プロジェクトが始まった。両社は一体となってこれを推進し、2015年11月に新基幹システム「Smart Pasco Systems(SPS)」を本稼働させた。

「営業から製造、販売、配送はもちろん、人事、財務などバックオフィスも含め全社の業務を見直し、シンプルに再定義しました。プロフィットセンターが営業部門と製造部門に2分化されていた構造を見直し、エリアや工場ごとにバラバラだった指標なども統一。これまでお客様が培ったノウハウと新しいビジネスプロセスのすべてを新システムに盛り込みました。SPSは受注から生産・出荷、売上・請求まで、一連の業務で一気通貫して利用できるしくみです」

プロセス重視の営業スタイルへの転換
的確な需要予測と最適な生産振分

この改革の最大のポイントは、利益追求型の経営への変革。そのためには、仮説に基づいて実行するプロセス重視の営業スタイルへ転換する必要があった。従来は日々の販売実績に注力しがちであったが、そこに「予測・見込み」という考え方を加え、精緻な利益管理ができることが求められた。

「パンの受注から納品までのリードタイムは、最短で3時間ほどです。実際にパンを作るには7~8時間かかり、受注後に生産していたのでは間に合わないため、予測を立て無駄なく生産・販売できるかどうかが収益に直結します。実績値に基づく統計・分析情報などを用いて需要予測を算出し、より最適化された生産計画を立てる。そのために、SPSにはAIを活用した需要予測と生産振分の機能が実装されています」

季節や曜日、長期トレンドなどによって異なる販売実績値を統計・分析して予測値が自動計算される。それに営業部門の判断と意思を加え、見込み数値を算出する。その需要予測データをもとに、生産ラインごとの能力や対象製品の生産リードタイム、製品の移動時間、納入リミットなどを踏まえ最適な生産・輸送計画を策定し実行できるようになった。

時間の経過にともない蓄積データが増えていくと、予測の精度は目に見えて高くなり、予測と実績のかい離がわずか0.3%しかなかったという事例も出ている。SPSの導入を機に、営業部門の意識が変わりはじめ、事実ベースの原価をもとに活動できるよう業務の改善・改革も進んでいる。一人ひとりがSPSの需要予測を使いこなし、プロセスを重視した営業スタイルに移行することで、全社的な営業力と収益力の強化を図る。

ソースコードを読み解き仕様を明らかに
40年以上使い続けたホストシステム撤廃

既存のホストシステムは、40年以上にわたり工場ごとに個別改修が繰り返され、全容や仕様がまったく分からなかった。しかしフューチャーアーキテクトはこういう状況下でこそ力を発揮する。

「私たちは創業からオープンな技術にこだわり、ホストシステムの撤廃を数多く経験しています。今回も独自の解析ツールを駆使して一つひとつソースコードを読み解いて仕様を把握しました。そして、業務を止めることなく新システムSPSを稼働させました。特定のベンダーや技術に依存しないSPSは柔軟性と拡張性に優れているので、たとえば、これまで専任の技術者に依頼せざるをえなかった変更をユーザー自身が行えるなど、ビジネスの変化をスピーディーに反映できるようになりました」

敷島製パンのプロジェクト担当者からは、システム再構築に留まらず業務改革を推進する上で、『社員以上にあきらめずに敷島製パンのことを考えてくれた』という感謝の言葉もいただいた。

「全社的改革は平たんな道のりではありません。誰かが明確な正解を持っているわけではないし、従来の考え方ややり方を変えることへの不安や反発も出てきます。とん挫することなく本プロジェクトを遂行できたのは、経営層をはじめ全社員が、“必ず成し遂げる”という強い覚悟で全社の意識を統一したからこそ。だから、私たちも思い切って取り組めました」

フューチャーアーキテクトは現在も、保守・運用のアウトソーシングサービスを提供し、新技術への取り組みを模索するなど、引き続き敷島製パンの成長戦略を支援している。