お客様のビジネスの未来図を描き、最先端の技術で具現化する。フューチャーアーキテクトのプロジェクトを紹介します。
2005年当時、佐川急便はホストコンピュータで基幹システムを運用し、年間数百億円にも上るITコストが経営を圧迫していた。フューチャーアーキテクトは世界標準の最新技術を駆使して新たな基幹業務システムを構築し、40%を超えるコスト削減を実現させた。2009年にはSGホールディングスとフューチャーアーキテクトが業務・資本提携し、成長戦略を加速させている。
甘粕 両社の関係は、2004年からですから10年以上になります。当時、佐川急便様では事業拡大によるデータ量の増加でシステムの処理能力が限界に近づいており、繁忙期である年末を乗り切れないのではないかという危機感をお持ちで、相談をいただいたことから始まりました。
谷口 ベンダー各社は数十億円にものぼるハードウェアの追加を提案してきましたが、IT維持管理コストはすでに当時の佐川急便の営業利益の6~7割を占めており、高コスト体質の改善は大きな経営課題でした。一方、新システムに移行しようとしても、システムは50ものサブシステムがある複雑な構成で、全容を把握できておらず、リスクを見極められませんでした。私たちは多い時に1日に500万個もの荷物を運びます。もし移行に失敗しシステムが止まれば世の中への影響は計り知れず、とても難しい決断でした。
甘粕 私たちは古い技術でつくられた旧システムをオープン化してダウンサイジングし、経営と業務とITが一体になった新システムに移行することを提案しました。年間ランニングコストも最終的に40%削減できる計算です。システムがブラックボックスでも、現行のソースコードから読み解いて棚卸しできるのが私たちの強みです。旧システムを止めることなく、安心安全に新システムに移行できる緻密な計画を提示しました。
谷口 ITへの深い理解と、しっかりとした戦略が決め手となり、ともにチャレンジすることを決意しました。基幹システム刷新プロジェクト「F-Cube」は2005年からスタートし、2012年1月にホストコンピュータを撤廃して完遂しました。ITコストも、想定より5年も早く目標額を削減できました。
谷口 「F-Cube」完遂による最大の効果は、大きな投資余力を創出できたことです。これまで毎年ITコストが下がり、削減分を守りから攻めの投資に割り当てることでコスト構造が大幅に改善し、競争力が強化されました。また、新システムは拡張性に優れているので、きめ細やかなサービスの拡充に柔軟に対応できるなど、経営戦略を迅速に実行できます。その後、グループ各社の主要なシステムを順次集約して技術要素を統一させ、全体の基盤として効率的に活用しています。
上木 人材が育ったのも収穫でした。それまでSGシステムはベンダーマネジメントが主な仕事でした。「F-Cube」に開発メンバーとして参画しフューチャーアーキテクトと協働したことで、Javaをはじめとした新しい技術を習得し、プロジェクトマネジメントやリーダーシップを身近で学びました。リリース後も私たちの手でシステムを保守運用していけるように、惜しみなくノウハウを提供して引き継いでもらえました。
谷口 いまでは自社で保守運用を担い、簡易な案件であれば私たちだけで対応できるまでになっています。フューチャーアーキテクトには大規模で難易度の高い案件を推進してもらうことで、最新技術のインプットやスキルアップ、ノウハウの蓄積がなされ、SGシステムの可能性がさらに広がっています。
勝田 私たちのミッションは、お客様の未来価値を高めることです。「F-Cube」を成功させられたことはもちろん、お客様がベンダーから主導権を取り戻すお手伝いができたのは大きな喜びです。
甘粕 2009年に業務・資本提携してからは、私たちはSGホールディングスの中長期IT戦略策定と推進を支援し、経営管理機能の強化から、新たな付加価値の創造や業務改革の施策立案をサポートしています。両社の得意分野を活かし組み合わせることで、競争力を高め、成長戦略を加速することが目的です。
勝田 現在、具体化している取り組みはふたつあります。ひとつは佐川急便様の業務の生産性を圧倒的に向上させる“攻めのIT施策”です。データ分析基盤などを活用して輸送効率を向上させるプロジェクトです。これにより、コスト最適化やサービスレベルの向上を目指します。
上木 もうひとつは、グループ全体で取り組んでいる「GOAL」プロジェクトです。ITと物流という両社の強みを駆使し、単なる物流の効率化ではなく、物流に関する課題解決を提案していくものです。
谷口 あの時決断してつくったIT基盤のおかげで、いま戦略的な経営ができています。また、資本・業務提携によって私たちのグループ全体の可能性が広がっています。フューチャーアーキテクトは「顧客の未来価値を高める」と標榜していますが、まさにそのとおりだと実感します。これからもともに歩み、成長していけるパートナーでありたいと思っています。