OUR SERVICE

全日本食品株式会社様

小売業

リアル店舗で
“One To Oneマーケティング”
を実践

フューチャーアーキテクト株式会社
山岸 敬
百貨店のシステム子会社を経て2007年に入社。
流通・小売業を中心にプロジェクトを推進する。
全日本食品株式会社は、ECサイトでは一般的な、顧客一人ひとりに合わせた「One To Oneマーケティング」をリアルビジネスの世界にいち早く取り入れ、小売業に革新をもたらした。収集した膨大なデータを分析・活用し、加盟店ごとに利益を最大化する施策を展開。確実な成果を挙げている。
Project Outline

プロジェクト概要

来店客ごとに購買履歴を抽出・分析し、購入頻度の高い商品を店頭表示価格より値引きして販売するという、個別のマーケティングを実施するシステムを構築。加盟店に小規模店舗が多いこと、顧客に高齢者が多いことから、来店時にショップカードを読み取らせると割引情報が掲載されたレシートサイズのチラシが印刷される小型プリンターも独自に開発した。システムが収集するビッグデータを精緻に分析して、店ごとに最適な品ぞろえ、売価、発注量を統計的に割り出し、加盟店の利益の最大化と経営の効率化に大きく寄与している。さらに、スマートフォンの利用拡大に合わせて、Web上で告知する機能を追加開発するなど、現在も継続して拡張している。

IT Japan Award 2011準グランプリ、データサイエンスアワード2015最優秀賞、2016 CRMベストプラクティス賞受賞など、高い評価を受け、業界内外から注目を集める。

フローチャート
お客さまの課題
  • ID付POSシステムが未導入
  • 会員管理システムが未整備
  • 高コストかつヒット率の低い折込チラシの限界
効果・メリット
  • システム導入を機に顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかで効果的なマーケティングを実施した結果、来店回数、売上金額、売上数量のすべてが前年比約10%増加した。
  • 会員管理が精緻化され、来店頻度や購入額などのセグメントごとにマーケティング戦略を立てられるようになった。
  • 膨大な購買データを分析して加盟店ごとに商品・数量・販売価格の最適な数値を割り出し、最適なタイミングで自動発注することで欠品・機会ロスを極小化。店舗の負荷を低減しつつ売上を増加させた。
  • 一商品あたりのチラシ費用が折込チラシの約10分の1に圧縮され、販管費が減少し利益率が向上した。

「巨大チェーンに負けない
究極のマーケティングを実現したい」
経営トップが抱き続けた強い想いを具現化

全日本食品株式会社(以下、全日食)は、全国に1800店あまりの加盟店を持つ国内有数のボランタリーチェーンを運営している。加盟店は独立性を保ちながらゆるやかに連携し、地域に根ざした独自の店舗経営を行っているのが特徴だ。全日食は、仕入れ、販売促進、プライベートブランドの商品開発、教育、情報システムなどを事業化して展開し、加盟店の経営を支援している。フューチャーアーキテクトとのパートナーシップがスタートしたのは2005年。各社がギブアップしたプロジェクトを成功させたことからだった。当初から全日食のプロジェクトを支えてきた山岸は、「リアル店舗でのOne to Oneマーケティング」という革新的な取り組みについて次のように語った。

「本プロジェクトは、経営トップである齋藤会長(当時社長)が長年抱いていた強い想いを受けたものでした。基幹系・情報系システムを無事に稼働させ、いよいよ未来に向けた攻めの戦略投資を実行することとなりスタートしました。One to Oneマーケティングはインターネットの世界では常識でしたが、リアルなビジネスでは難しく、国内での目立った成功事例も当時はありませんでした。しかし前例にとらわれず新しいアイディアを提案する当社への会長はじめお客様からの期待は大きく、両社は協力してリアル店舗におけるOne to Oneマーケティングに挑みました」

山岸らが考えたのは「購買データを分析し、来店時に“あなただけの特別価格が載っているチラシ”を提供する」というしくみだった。プロジェクトは2010年1月に要件定義から開始し、同年9月、オリジナルの販売促進システム「Zen-Nisshoku Frequent Shoppers Program(ZFSP)」が稼働した。成果は両社の予想以上で、一日の売上高が5年間で26%もアップした店舗も出ている。

日本の地域密着型経営に合った新POSシステムづくり
ブラックボックスだった海外POSを解析

ZFSPが稼働するには大きな課題がふたつあった。ひとつは採用したPOSシステムがブラックボックス状態だったことだ。このイスラエルのリタリックス社(2012年NCR社が買収)のパッケージは、英テスコ、仏カルフール、米ターゲットといった、世界の大手小売事業者のなかでもITを活用している企業でよく使われている。

「日本のPOSはひとつの商品に10通りほどの価格設定しかできないのに対し、リタリックス社のPOSは会員が100万人いたとしても個別に価格を設定できました。しかし現地に行き打ち合わせを始めたところ、システムに関するドキュメントが一切存在しないことがわかりました」

そこでPOSセンターサーバー側のエントリー画面を分析して、基幹系システムとPOSシステムとでデータ連携をするにあたって、どのようなデータをどのタイミングで、さらに、どのようなフォーマットで連携すべきかを類推した。そして両システムを連携させて実際にデータを流し、2か月をかけて1000を超えるデータパターンについて一つひとつ地道に動作確認をすることで、POSシステムの全容を把握して日本の商習慣と全日食のビジネスに合った新POSシステムをつくりあげた。

加盟店のIT武装を本部が継続して主導
売上向上で巨大チェーンに対抗

もうひとつの課題は、来店客一人ひとりにどのように特売情報を伝えるかだった。スマートフォンを持たない高齢者が多いので、その場でチラシを印字し手渡したい。しかし加盟店は小規模店舗が多く、大きな機器を置くスペースはない。飲食店のキッチンプリンターも含めいろいろ調査したが、実用に耐えうるものがなかった。

「それならば作ろうと、自分たちで設計図を引いて部品を購入して組み合わせ、プログラミングをして作り上げました。ないならばハードウェアもつくるというのは、非常に当社らしい決断でした」

フューチャーアーキテクトはその後も各案件に携わり、CIOを出向させるなど、全日食のIT戦略パートナーとしてサポートを継続している。同システムは30回以上の改修を重ね、2016年にはWeb化し機能を充実させ、進化を遂げている。また、システムが収集する月間1億件を超える膨大なPOSデータを分析・活用し、自動発注や価格最適化もさらに精緻になっている。

「当社のミッションは“お客様のビジネスに成功を提供する”です。お客様とともに未来を描き、具現化し、最終的に価値を生み出すところまで一気通貫で行います。今回も単なるシステムの構築や入れ替えではなく、ビジネスの永続的な発展を支える戦略的な基盤をつくりあげることできました」