アルムナイ
座談会01
すべては、フューチャーから始まった

すべては、フューチャーから始まった

ヴェルク株式会社 代表取締役  田向 祐介  / 
取締役  津久井 浩太郎

企業プロフィール

2010年12月、2人のフューチャー同期生によって起ち上げられる。システム開発・ITコンサルなどの受託事業からスタート。2014年には、中小企業向けクラウド型業務・経営管理システム「board」のサービス提供を開始。現在5,300社を超えるユーザーに利用されている。2022年には大阪大学との共同研究から生まれたサービス「IRQuA(イルカ)」をリリース。大学IR(Institutional Research)を進化させるデータ分析ツールとして、日本全国のさまざまな大学で利用されている。現在の社員数は10名。「10人の会社で1万社が使うサービスを提供する」を掲げ、人数規模に依存しない事業を展開している。
※大学IRとは、大学における教育・研究活動や運営に関するデータを収集・分析し、経営戦略に活用する業務

「戦友」とともに、理想のチームをつくる

――お二人はフューチャーの同期だそうですね。

田向 はい。苗字の頭文字が「た」と「つ」で、新入社員研修の席が隣だったことがはじまりです。なので、一緒のチームで研修に取り組むこともありましたね。
津久井 田向はアメリカの大学で学び、入社前にITの仕事もしていたよね。だから、他の多くの新人とは技術のレベルが違っていた。今、流行りの「人生2周目」みたいなイメージがありました。距離が縮まったきっかけは、初期配属のプロジェクトが同じだったことです。
田向 そうだね。最初にアサインされたプロジェクトでは、入社1年目でもいろいろなことを任されました。私たちがその頃に得意としていた領域は異なり、私はWebアプリで津久井はインフラ。大変なことも多かったですが、補い合いながら同じ苦労を味わったことで、ただの同期から「戦友」みたいな間柄になりました。

――「戦友」の関係が、今も続いているわけですね。独立・創業あたっては、どのような経緯があったのでしょう。

田向 元々起業したいと思っていたわけではありませんでした。1社目のフューチャー、2社目のITベンチャーで仕事をするうちに、組織作りの重要性を感じる出来事が何度もありました。そこから私たちが理想とする組織をつくるために、自ら会社をつくりたいという想いに変化していったんです。課題を解決する手段として起業を選択し、津久井とともにヴェルクをつくりました。

――津久井さんはどのような想いで、ともに独立する道を選んだのですか。

津久井 ひとりのエンジニアとして「何をやるか」も重要ですが、私にとっては「誰とやるか」も同じくらい重要な要素でした。フューチャー時代からの「戦友」である田向と、もう一度、一緒に仕事がしたい。何もないところから組織やプロジェクトを立ち上げてみたい。その想いが、当時の決断につながったのだと思います。

困難を乗り越え、「価値」に変える

――創業当時のエピソードを教えてください。

田向 ヴェルクは、システム開発・ITコンサルの受託事業からスタートしました。創業当時、とくに苦労したのはキャッシュフローです。開発案件は、提案から納品までが長い。フューチャーって、お客様から納品時に一括でお支払いいただくのではなく、毎月報酬をいただいていますよね。外に出てフューチャーのこの請求の仕方は凄まじいことだと知りました。創業当時、ヴェルクの経営会議では、お金の話しかしてなかったくらいです。
津久井 そうだね。「いつ入金があるのか」とかそんな話ばかりだった。
田向 ただ、その苦労は無駄ではありませんでした。私たち自身の経営者としての悩みは、現在の主力サービスである業務・経営管理システム「board」の機能に反映されています。「キャッシュフロー予測機能」は、その象徴的なものです。自らが「こんな機能があったらいいのに」と考えていたものが、5,300社以上のユーザーに受け入れられている。これほど嬉しいことはないですね。
津久井 一方で思い知らされたのは、「看板」が持つパワーです。創業当時、受託事業のコンペで知名度のある大企業に持って行かれることが多かった。「何となく安心だから」と負けてしまう。あの悔しさがあるから、ここまで頑張れたと思います。
田向 でも、「提案内容はいちばんよかった」と評価されることも多かったよね。
津久井 そうそう。フューチャーでの当たり前を、普通にしているだけ。でも、お客様から内容に対して高い評価をいただきました。それは提案だけではなく、その後の要件定義や開発など、あらゆるフェーズにおいても同様です。外に出てから気づいたことですが、新卒入社からの数年間でビジネスをやっていく上での強力な武器を手に入れていました。大学IR用ダッシュボードサービスである「IRQuA(イルカ)」も未来を描く提案力と高いレベルで具現化する実装力があったからこそ、大学という限られたパートナー企業しか入り込めない世界でも評価されるサービスが提供できたと思います。

離れてみてわかった「フューチャーの魅力」

――フューチャーで得た経験やスキルは、どのように役立っていますか。

田向 フューチャーは、人も仕事も非常にレベルが高い。そこで得たもの・経験したものが、今につながっていると感じます。例えば、「board」の会計連携機能は、フューチャー時代のプロジェクトでの学びをかたちにしてお客様に価値提供したものです。当時、繰り返し教わったのは「すべての業務データは仕訳に落ちる」ということ。本質を捉えているからこそ、税理士・会計士・経理の方々から評価が高いシステムになりました。フューチャーは昔から新卒入社者に簿記2級を取得させますよね。簿記2級は簡単ではないとは思いますが、会計の知識を習得することはコンサルタントとして必ず活きると思います。

津久井 私はとくに「お客様の抱えている真の課題を考える」ことが、大きな財産になっています。RFPの背景にあるお客様の課題の本質を読み取る力、お客様のフワッとした段階の青写真を具現化させていく力は、間違いなくフューチャーで培われたものです。実は、RFPの内容を無視した提案をしたこともあります。私にとっては、RFPで明記されている要求事項以上に重要な要素があると確信していたからです。お客様には「津久井さん、よくあんな提案したね」といわれながらも発注いただきました。でも、自分としては当たり前。筋違いなシステムを作って、使われなければ本末転倒です。
田向 確かに、真の課題を考え抜く思考はフューチャーで身につけたものと感じます。
津久井 それに提案にいく際も私一人いれば十分。コンペ相手は会議室からあふれそうな大所帯で提案に行く中、私ひとりで伺って驚かれたことがあります。でも、自分で考えたものを提案して、自分でつくるので、私がやると言ったらやるし、やらないと言ったらやらない。業務もシステムも一気通貫で対応できる強みを感じています。

「フューチャー」だから、距離が縮まる

――現在、おふたりはフューチャーやその社員、アルムナイとのつながりはありますか?

津久井 直近ではフューチャー出身の方からお声がけいただいた案件の支援をしています。また、同期の集まりに参加したり、独立された先輩とお会いしたりもしていますね。
田向 そういえば、「フューチャー出身」がきっかけで、不思議とつながったことはあります。在籍時は関りがなかったフューチャー卒業生の方が「『board』をやっているのは、フューチャー出身者らしい」と聞きつけて、メッセージをいただき縁がつながりました。あとは、2016年ごろだったかな。「Vuls」というOSSの脆弱性検知ツールをフューチャーで開発しましたよね。開発者が同期だったので「使ってみないか」と連絡をもらい、ほぼ初期ユーザーとして「board」で利用しました。その縁で、勉強会に呼ばれてサービス立ち上げに関する発表をフューチャーで行ったこともありましたね。

――現在、当社ではアルムナイコミュニティーを活性化し、交流の環を広げようとしています。卒業生の皆さんがつながることで期待したいことはありますか?

田向 素晴らしい取り組みですよね。いきなり「何か一緒にしよう」とか、「ビジネスで協業しよう」みたいな話ではなくても、さまざまなフィールドで活躍する人と話すだけでも、得られるものは大きいと思います。
津久井 現在の若手社員とも話をしてみたいですね。フューチャーを辞めてから15年以上経ち、その間に起きていることは詳しくないですから。自分自身もさまざまな経験を経て話せる内容が増えているので情報をアップデートさせたいです。
田向 アルムナイが再集結するイベントも面白そうです。フューチャー出身の起業メンバーを集めて話す機会があったら嬉しいです。
津久井 確かにSNSではつながっていても、当たり障りのない話しかオープンには書きません。元フューチャー社員には共通する考え方が根付いているはず。共感できる仲間とクローズに深い話ができたら面白い可能性が広がるのではないかと思います。