2026.07.13
進化する生成AIとビジネス応用
フューチャーのAI戦略推進グループ(AIXG)の大規模言語モデル(LLM)研究者である森下睦が、AIの最新動向とビジネス応用の展望をテーマに、フューチャーの取り組み事例を交えてお話しします。
AIの進化と到達点
AIの進化においてブレイクスルーが起きたのは、2012年だと言われています。画像認識精度を競う世界大会であるILSVRCで、深層学習(人間の脳の仕組みを模倣したニューラルネットワークを用いて膨大なデータから自動的にパターンや特徴を学習するAI技術 ) を用いたチームが圧倒的精度で優勝を果たしたのです。さらに、2015年にはMicrosoftが開発した深層学習モデル「ResNet」が画像認識において初めて人間の正確さを超えました。
その後、2017年に並列処理と長文の文脈理解を実現するTransformerモデル、2022年にはChatGPTが登場するなど、AIは目覚ましい進化を遂げました。動画や音声といったデータを通じて現実世界を詳細に認識する解釈性も向上しています。さらに人が作ったもの・話したものと区別がつかないような動画や音声を生成するといったことも可能となりつつあります。
また、知識や思考といった領域でも、2025年にはソフトウェア開発に関するベンチマークであるSWE-benchと、博⼠レベルの専⾨知識を問う質問応答のベンチマークであるGPQAのスコアがともに急上昇しました。
ソフトウェア開発や博士レベルの専門性までも身につけ、かつては人間にしか担えないと考えられていた領域にまで、AIの能力は達しはじめています。

AIの能力を測る指標である、SWE-benchとGPQAのスコアは2025年に急成長
AI自身が内省し、深く考え続けることで思考の精度向上が可能に
AIの進化を支える基礎技術と応用技術
進化の背景には、基礎技術である「思考モデル」の高度化と、応用技術である「AIエージェント」の発展が挙げられます。これまでのAIは人間が手順や方法を示さなければ能力を発揮できませんでしたが、最新の思考モデルは破綻することなく自ら内省し、安定して考え続ける力を備えています。この基礎技術をベースにしたAIエージェントは、ユーザーと対話するだけでなく、様々なシステムと連携しながら自律的に手順を考えて動作し、目的を達成します。こうした基礎と応用の融合が、AIの進化を牽引しているのです。
AIエージェントは、定型的かつ予測可能な環境で業務を遂⾏する「ワークフロー型」から「限定自律型」に進化しています。フューチャーアーキテクトが開発した、金融機関向け戦略業務系システム「FutureBANK」でもこの「限定自律型」のエージェントが組み込まれています。手順を人間が都度チェックし、補完しながら業務を遂行させる業務イメージです。
例えば金融機関の業務で、AIエージェントがどのように人の業務を代替できるかを説明します。
銀行員が住宅ローンの審査を行う際、従来は各種証明書や物件に関する書類など、お客様から受領した多数の情報を手作業でシステムに入力していました。しかし、書類には不備が発生しがちなため、都度お客様にお問い合わせするなど手間のかかる業務が発生します。これがAIエージェントを使うと以下のように変わります。

- 書類の自動読み取り:申込書や源泉徴収票をシステムに投入すると、AIが内容を瞬時に読み取り、必要事項を自動で記入。
- 顧客への自動連絡:不足している情報がある場合、AIが自動で顧客宛てに案内メールを作成。メールの誤字脱字チェックもAI自身が行い、人が承認することで送信。
- 返信の自動処理と起票:顧客からの返信を受け、その内容から必要情報を抽出してフォームに記入、稟議書を自動で作成。
- 最終チェック:人が最後に内容を確認して「申請」を行う。
AIエージェントはいまのところ「限定自律型」ですが、領域によっては目的を示すだけで手順まで考えて完遂する「完全自律型」の開発が進んでいます。この技術進化がすすむとビジネスにおける人間の役割は、「作業者」からAIが仕事をした結果を承認する「承認者」へと変わっていくと考えられています。
AIの技術をビジネスの現場に応用する3つの"Ready"
AIをビジネスに応用し、その力を最大限に活用するには準備が必要です。業務プロセス・業務データ・システム群の3つをAI-Readyな状態にすることです。
●AI-Readyな業務プロセス
まず業務プロセスを、人がAIを補助的に呼び出して使うAI-enabledな状態から、AIを深く業務に組み込んだAI-nativeに変⾰していきます。AI-nativeとは、AIをなくしてしまったら業務や事業が成立しないほど、AIが深く業務に組み込まれた状態をいいます。
ここではシンプルにお伝えするために"効率化"を例にお話していますが、AI-nativeにより人の介在を極限まで減らすことで、効率化を超えた強力な優位性を生み出すことができると、私たちは考えています。

●AI-Readyな業務データ
AIが業務に活⽤できない最大の要因はデータ不⾜です。そのため、まずデータを十分に整備していく必要があります。さらに、AIは主に公開データから学習しているため、⾃社業務に特化するためには各社固有のデータが必要です。
AIが活用しやすいデータの特徴としては、 AIが意味を理解できるように構造化・説明がされている「解釈性」、常に最新の状態を反映する「リアルタイム性」、AIが機械的にデータにアクセスできる「アクセス可能性」を備えることが重要です。
さらに、AIの解釈能力は飛躍的に高まっており、動画や画像、音声やセンサーデータといったこれまで使えなかったデータにも新しい価値を生む可能性があります。既存の枠組みにとらわれず、自社に眠るデータをIT資産として活用する発想力や想像力が、企業の競争力の源泉になっていくと考えます。
●AI-Readyなシステム群
システム群においては、AIにより業務を駆動することを前提としたアーキテクチャが必要です。あらゆる機能にAIがアクセス、操作できるフルオープンAPIや、リアルタイムにデータ処理やシステム処理が動作すること、多種多数のAIが24時間駆動できるスケーラビリティ(拡張性と柔軟性)が求められます。
これら3つのReady(業務プロセス・業務データ・システム群)は互いに深く関係するため、バランスよく整備していくことで、技術⾰新の効果を最⼤限に享受できると考えます。フューチャーでは先端技術を研究する専門家と、3つの領域に精通し業務知見と実装力を持つコンサルタントが協働して、AIとITを一体でデザインすることでお客様の課題解決に取り組んでいます。
本稿がAI実装に向けた課題を振り返るきっかけになれば幸いです。

所属・役職は記事公開当時のものです