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フューチャーアーキテクトとYDCが描く「次世代のモノづくり」
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フューチャーアーキテクトとYDCが描く「次世代のモノづくり」

2024年8月、フューチャーグループのフューチャーアーキテクトとYDCは、製造業におけるコンサルティングサービスの強化を目指していくことを発表しました。両社の協業によりどんなシナジーが生まれるのか。そして日本の製造業の「未来」にどのような価値を提供できるのか。3名のコンサルタントがその想いを語ります。

※本記事は2024年10月に行った取材をもとに構成しています。株式会社ワイ・ディ・シーは、2025年1月にフューチャーアーティザン株式会社に商号変更しました。

齋藤 敦子

齋藤 敦子

フューチャーアーキテクト株式会社

製造・エネルギーサービス事業部 Group Leader

2005年株式会社マイクロ・シー・エー・デー入社。2022年フューチャー株式会社へ合併。製造業向けPLMシステム導入支援、設計・開発を行う。BOM管理を主軸にCAD-BOM、E-BOM、M-BOM、BOPまでの履歴管理と変更プロセス管理の構築。また、MESやSAPに関わる連携の要件定義、設計・開発を担う。

黒田 裕之

黒田 裕之

フューチャーアーキテクト株式会社

製造・エネルギーサービス事業部 マネジャー

2005年 独立系SIerに入社。国内メーカーのPLMパッケージの提案〜導入を実施。2020年以降は群馬エリア責任者としてマネジメント業務を中心に活動。2024年にフューチャーに入社し、PLMを中心として製造のお客様の課題解決を行う。

團野 晃

團野 晃

フューチャーアーティザン株式会社(旧 株式会社ワイ・ディ・シー)

アイ・デザイン・パートナービジネスユニット BUリーダー

大手自動車部品会社の技術部門からキャリアをスタートし、製造業を中心としたコンサルタントに転身。
DXグランドデザイン、エンジアリングチェーンの業務改革に従事。PLM MES BOMデータデザイン、CPQなどのデータ、業務デザインを得意とする。

フューチャーアーキテクトの豊富なシステム導入実績と製造現場を熟知したYDCのタッグ

齋藤 私はPDM(Product Data Management)・PLM(Product Lifecycle Management)のシステム導入に関して20年程のキャリアがあり、システム構築のテスターから、要件定義・開発・設計・導入まで製造業のお客様に対して様々な支援を行ってきた実績があります。

黒田 私はこれまでSIerとして長くPLMの領域に携わってきましたが「お客様が実現したいことに対して本質的なアウトプットを提供したい」という想いから、製造業の課題解決に特化したコンサルタントとしてフューチャーアーキテクトにジョインしました。

團野 私は新卒から、大手自動車メーカーのサプライヤーで生産技術畑を歩んできました。デジタル化が全く進んでいない時代に泥や油にまみれて、紙で原価計算や設計をした経験もあります。時代とともにデジタル化が進みPLMやアーキテクチャなどに関する知識を得て、現在はYDCでクライアントパートナーに従事しながら、製造業の課題に向き合っています。

フューチャーアーキテクトとYDCが描く「次世代のモノづくり」取材時の様子1
團野 晃/ワイ・ディ・シー(現 フューチャーアーティザン)ビジネスデザインパートナービジネスユニット

團野 YDCは1972年の創業から50年以上にわたり、製造業のお客様を中心に事業を展開してきました。製造業のビジネス変革を推進する企業として、業務改革や品質解析など独自のソリューションやノウハウを提供してきた実績は数多くあります。一方で、テクノロジーの進化にあわせてより柔軟なシステムをスピーディに実装したいというお客様のニーズの高まりに対して、どう応えていくか課題を感じる部分もありました。

齋藤 フューチャーアーキテクトは、「経営とITをデザインする」をコンセプトに様々な業界の経営課題をテクノロジーをフル活用して解決に寄与するということを強みとしています。YDCは、2017年にフューチャーグループに参画しましたが、システム導入における実績が豊富な私たちと一緒に悩むことで製造業のお客様に対して付加価値を提供できる可能性が広がったと思います。

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製造業におけるシステム導入の課題と成功へのアプローチ

團野 日本の製造業では「すり合わせ」が不可欠です。例えば設計部門と製造部門では、考え方や優先順位に違いが生じるケースもあります。そんな時こそ、縦割りや個別最適に陥らないように、企業の未来にとって何が一番重要なのかを示し導くことが求められます。また、経営層との密なコミュニケーションも必要です。マーケットやビジネスの変化に対して経営層がスピーディな決断を行うためには、私たちコンサルタントが経営判断の材料を素早く提示し、経営方針に沿った円滑なプロジェクト運営を推進しなければなりません。

黒田 昨今、業務に合わせてシステムを開発する「Fit&Gap」ではなく、システムの標準機能に合わせて業務を変える「Fit to Standard」を採用する現場が多くあります。「Fit to Standard」にしても、企業特有の考え方や仕事の進め方は尊重する必要があります。プロジェクトに伴走するコンサルタントもシステム開発者もお客様も業務知識を持ち寄って、新システムについて真剣に議論しなければなりません。システム導入を成功に導くためには強固な連携が不可欠です。

齋藤 既存システムについてどんな課題があるのかを正確に把握しないまま外部ベンダーに委託した結果、データの不整合などが発生しシステム導入の効果を享受できないといったケースを散見します。システム導入には、現場の業務を熟知した上での全体デザインが必要ですし、自社のシステムをお客様の中でもしっかり管理できる体制も必要になってきます。だからこそ「業務とシステムを両面から支える」という私たちの強みを発揮できる場がまだまだたくさんあると確信しています。

フューチャーアーキテクトとYDCが描く「次世代のモノづくり」取材時の様子2
齋藤 敦子/フューチャーアーキテクト 製造・エネルギーサービス事業部

「次世代のモノづくり」とは?製造業の「匠の技」を未来に

團野 日本の競争力が落ちてきたと言われる背景には付加価値を見誤ってきたことがあるように感じます。私たちとしてもあるべき付加価値を提案していきたいと思っていますが、その一つとして、「Fit to Standard」でやるべきところと「匠の技」を継承するために投資すべきところを切り分ける必要があると考えています。例えば、原材料から大量の製品を生産するプロセス系の産業ではレシピが命なので、それを管理するところに投資すべきです。一方、図面規定などの規格を満たしているかをチェックする仕組みについては、付加価値が発生しないので、AIを活用して自動化、効率化する。日本企業の強みは確かに「すり合わせ」ですが、AIなど、領域によっては「すり合わせ」ではなくテクノロジーとの「組み合わせ」も重要です。私たちはその「組み合わせ」で売れるいいモノづくり、お客様に真の付加価値を提供していきたいです。

黒田 日本の製造業は、ヒトが蓄積してきたノウハウを強みに生き残ってきた面もあるので「匠の技」の継承にはしっかり投資をしていくべきだと思います。例えば、今まで現場でモノを見ながら行っていた「すり合わせ」を、3Dのバーチャル空間で行えば、設計段階から現場を巻き込むことができ、ノウハウを継承しながら全体のリードタイムを削減できます。今後深刻化するであろう労働力不足にも貢献できる可能性を秘めています。

齋藤 「ヒト」の観点でいえば、ベテランであっても、若手であっても、新しい製品開発ができるベースラインを作る必要性を感じています。今は、特定の人に依存する業務があり、その人が退職したら失われるノウハウもあるでしょう。まずは、そうならない仕組みをつくることが重要です。「10年経験を積まないと次のステップにいけない」といった縛りではなく、20代、30代でも現場責任者になれるように、キャリア育成となるジョブローテーションも含めた柔軟な情報共有と意思決定の仕組みを取り入れていくことが必要です。

フューチャーアーキテクトとYDCが描く「次世代のモノづくり」取材時の様子3
黒田 裕之/フューチャーアーキテクト 製造・エネルギーサービス事業部

PLMの可能性とグローバルで戦い抜くために

齋藤 日本の製造業が激しいグローバル競争のなかで生き残るためには、ESGにも対応したサステナブルなものづくりが求められます。欧州ではすでに厳しい規制が設けられていますが、今後は製品のリデュース、リユース、リサイクルについてもより厳しい対応が求められ、例えば製品にQRコードをつけるとかトレーサビリティの管理が必要になってくる可能性があります。

團野 今後は、市場をより意識しながら、PLMによる効果的な製品ライフサイクルの管理が不可欠になってくると思います。PLMで「BOM(Bill Of Materials)が作れます」といったポイントを訴求するばかりでなく、フロント側の「バリエーション管理」などに訴求の舵を切っても良いのではないかと感じています。

齋藤 私自身もこれまでに現場の方が、経営層にPLMなどのシステム導入の意義をうまく説明できない場面を目にし、もどかしさを感じてきました。「PLMはどこからスタートし、どこまでをカバーするものなのか」という広域な定義で考えていく必要もあると思います。

黒田 グローバルでは、製品ベースのPCF(製品カーボンフットプリント)を管理していく必要もあるので、YDCが提供する「ESG経営共創サービス※」を活用することで、CO2排出量の管理を起点に製品の付加価値も提案できると思います。製品や製造工程の透明性を付加価値として高めていくのはサービスとしても魅力的です。カーボンを可視化したり、軽減したりするのをテクノロジーベースにアプローチしていくことは、今後ますます重要になってくると思います。

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協業により提供できる価値

團野 私たちが提供できる価値のひとつとして「個別受注の仕様を確定するプロセス」があります。YDCとフューチャーアーキテクトが連携することで業務のデザインと実装力の一気通貫が強化され、個別受注に対する仕様決めはもちろん、システムを利用してどのように管理・再利用していくかという課題に対して、最適な解を提供できる自信があります。

齋藤 YDCと協業する中で、システムと業務に関する蓄積したデータをどのように活用していくのかが、私たちにとってポイントだと思っています。業務・IT・経営という3つの視点から、製造業の経営者の方に的確な提案ができると考えています。

黒田 私たちは特定のパッケージ導入を目的としているわけではなく、お客様にとってのベストプラクティスを実現できることが強みです。私たちは様々な業界で「一気通貫のプロジェクトマネジメント」を実現しており、業界を横断した知見も上手く取り入れながらYDCとともに、お客様を伴走支援していきます。私たちがお客様の中に入り、同じ市場を見る。そして、今後起こりうるリスクに対して議論をしていく。その中でテクノロジーで解決できることは、私たちがサポートするといったことで製造現場に貢献していきたいです。

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