メンバーの画像

コンテンツの価値を最大化せよ クラウド型CMS GlyphFeedsが変える情報発信の姿

社会変革

FUTURE AGENDA(フューチャーグループ統合報告書)では、フューチャーグループの未来の姿についてあらゆるステークホルダーとともに考え、対話するためのコンテンツを発信しています。今回は、フューチャーグループの重要テーマである「社会変革」に関する事例の第一弾として、GlyphFeeds(グリフィード)の取組みをインタビュー形式で紹介します。

宮原 洋祐

宮原 洋祐(みやはら ようすけ)
フューチャー株式会社 執行役員
テクノロジー&イノベーション担当

山上 燦

山上 燦(やまがみ さん)
フューチャー株式会社
Technology Innovation Group
メディアグループリーダー

聞き手:FUTURE AGENDA企画編集チーム

GlyphFeedsとは何か

――はじめに、GlyphFeedsについて簡単に紹介してください。

山上: GlyphFeedsは、2019年にフューチャーが独自開発したメディア業界向けのクラウド型CMS(コンテンツマネジメントシステム)です。たとえば新聞社の場合、紙面かデジタルかは関係なく、取材記事や写真、画像などすべてのコンテンツをクラウド上のデータベースに集約して管理でき、編集業務もパソコンやタブレットなどの端末と通信環境さえあれば、どこからでも行えます。もともとは新聞業界をターゲットに開発しましたが、今後はメディア業界で幅広く活用されることを想定し、様々な機能をシステムに追加しているところです。

GlyphFeeds

GlyphFeedsによって実現できること

  • ワンコンテンツマルチユース:一つのコンテンツを紙面でもデジタルでも活用
  • 柔軟な働き方:クラウド上に構築されたシステムのため、いつどこにいてもCMSへアクセス可能
  • 新規サービスの創出:APIを使って外部サービスと容易に接続し、コンテンツの新たな活用方法を創出

GlyphFeedsを開発した背景

――なぜ新聞業界を対象に、GlyphFeedsを開発することにしたのでしょうか?

新聞社が生み出すコンテンツの価値を再定義したい

宮原: 新聞社が生み出すコンテンツの価値を再定義したい、という思いが強かったからです。新聞社の記事を掲載して広告収入を得るというWebメディアのビジネスモデルが広がったことで、ユーザーは多くの記事を無料で読めるようになりました。その結果、新聞離れが加速し、疲弊していく新聞社の姿を見て、今こそ彼らが生み出すコンテンツを最大限に有効活用し、付加価値をつけてユーザーへ届ける仕組みを作る必要があると考えました。
一方で、新聞業界のシステムは長年、既存の限られたITベンダーによって構築されていて、新しいチャレンジがしづらい環境にありました。この状況をなんとか打破したいとも思いました。

――新聞社の内部でも、そういう思いを持つ方は多かったのでしょうか?

宮原: いえ、当時はまだ少なかったですね。新聞社の中にもデジタルメディアにシフトしなければ生き残れないという強い危機感を抱いている方はいましたが、まだまだ少数派でした。だからフューチャーに対して、組織的な変革の手助けをしてほしいと期待していた面もあったと思います。

宮原 洋祐

新聞社が生み出すコンテンツの価値を再定義したい

事例:日刊工業新聞社のGlyphFeeds
導入

――業務の効率化というより、コンテンツが持つ価値を最大化するための方法を生み出すという発想から、GlyphFeedsは開発されたのですね。具体的には、コンテンツの価値をどのように最大化していくのでしょうか?

山上: それでは、2021年にGlyphFeedsを導入した日刊工業新聞社様(以下、日刊工)を例にお話しします。日刊工は主に製造業を対象としたB to Bビジネスのニュースを多く扱う新聞を中心に、雑誌や書籍の出版、展示会やセミナーの開催を手掛けているほか、企業と企業をつなぐようなビジネスもされています。他の新聞社と同様に紙の新聞が伸び悩むなか、日刊工は「産業情報のプラットフォーマーになる」ことを中長期的な目標として掲げ、ビジネス変革を実現しようとされています。

――「産業情報」というコンテンツを提供する会社になることを目指されているのですね。

GlyphFeedsを基盤にコンテンツを中心に据えたビジネスモデル、管理システム、業務フローを構築

山上: そうです。ただ目標を掲げてはいたものの、当時の業務の流れやリソース配分は、まだまだ紙面制作が中心でした。たとえば、電子版は紙の新聞が発刊された後に公開されて、記事や写真のコンテンツも紙面、電子版、書籍、イベントと媒体ごとに管理されていて、横のシナジーがまったくありませんでした。そこで日刊工は、一度編集・加工したコンテンツを複数の媒体で効率的に活用できる仕組みをつくろうと考え、GlyphFeedsを基盤にコンテンツを中心に据えたビジネスモデル、管理システム、業務フローを構築することにしました。
新システムによって、日刊工は一つのコンテンツを紙面・電子版・セミナーなどマルチ媒体で配信できるようになり、個々の読者のニーズに合わせて、タイムリーかつ最適なメディアで情報を届けることもできるようになりました。それに最近では、ECサイト上で記事や画像などのコンテンツを販売する新規ビジネスも始めています。

――新規ビジネスへの展開がスピーディーですね。

山上: はい、構築にかかった期間はたった半年程です。というのも、GlyphFeedsのシステムは、各コンポーネントがAPIによって疎結合で接続され、CMSと外部システムがスピーディーに接続できるので、短期間での構築が可能です。新規事業を展開したい場合、全体のシステムを組み直さずに試行錯誤を繰り返せることも、GlyphFeedsの大きな強みですね。

山上 燦

――なるほど。GlyphFeedsの導入によって、コンテンツを軸としたビジネスモデルに素早く転換できたわけですね。

宮原: コンテンツを一元管理することはもちろん大切ですが、メディアにとって重要なのは、コンテンツにどのような付加価値をつけて、どう販路を広げていくかを考えることだと思います。心臓部分であるCMSをGlyphFeedsで素早く構築できれば、その後の新しいビジネスの創出に注力することができます。

GlyphFeedsを基盤にコンテンツを中心に据えたビジネスモデル、管理システム、業務フローを構築

フューチャーだからこそできること

――GlyphFeedsを開発する上で活かされた、フューチャー独自の強みはありますか?

最新テクノロジーを実装するだけでなく、世の中にない仕組みやサービスを作れる技術力がフューチャーの強み

山上: いろいろなデータを蓄積できる汎用的なデータ基盤としたことで、新聞業界に限らず、他業種でも使えるサービスになっていることが強みだと言えます。ほかにも、日本語特有の縦書きに対応し、かつスピードが問われる編集業務に耐えうるWebの縦書きエディタは、フューチャーが開発した世界で唯一の技術です。

――確かにWeb上で動くサービスは、どれも基本的に横書きです。最新技術を実装するだけでなく、世の中にない仕組みやサービスを作れる技術力は、フューチャーの強みですね。

最新テクノロジーを実装するだけでなく、世の中にない仕組みやサービスを作れる技術力がフューチャーの強み

GlyphFeedsの社会的意義

――社会変革の観点から、GlyphFeedsにはどのような意義があると考えますか?

宮原: コロナ禍をきっかけに、リモートワークをはじめ多様な働き方を推進する企業が増えています。新聞記者はハードワークだと言われますが、GlyphFeedsはどこからでもモバイル端末でデータを入稿できるので、柔軟な働き方の実現に大きく貢献しているのではないでしょうか。あとはGlyphFeedsを導入いただいた新聞社の方から、以前はデスクが紙の山だったけれど、導入後はペーパーレス化が進んだという声もよく聞きます。
それから、自然災害や紛争などが発生しても影響なく取材活動が続けられることですね。モバイル端末での入稿に加えて、クラウドによって世界中のどこにいてもシステムを利用できるので、世界のどこで大きな災害が起きたとしても、途切れることなく情報を発信できます。システムを通じて、日本のジャーナリズムを支えていきたいと考えています。

これからの挑戦

――最後に、GlyphFeedsのこれからの挑戦について伺います。まずは新聞業界で挑戦したいことは何でしょうか?

メディアが長期的にビジネスを持続できる環境を作る

宮原: ジャーナリズムや新聞社は、社会において必要不可欠ですが、その役割の果たし方は、変わらなければいけない時期に来ていると思っています。彼らがビジネスを長期的に持続できる環境を作るためには、コンテンツを中心に考え、コンテンツの価値を再定義することが必要です。また今後は日本各地にある地域密着型のメディアにも使ってもらえるようにしていきたいです。

――GlyphFeedsは標準化されたサービスなので、各社で一からシステムを作るよりも構築期間も費用も抑えられますよね。通常のCMSは構築に2、3年かかるところ、GlyphFeedsでは10カ月で立ち上がった事例もあると聞きました。相対的に予算規模の小さい地方や島のメディアも活用することができるので、地域創生にも繋がりそうですね。

宮原: そのためにも、より導入しやすいシステムへさらに進化させていきたいです。それに、求められる情報が必要な粒度で適切な頻度・タイミングで届くようになればいいと思っています。朝刊や夕刊のようにメディア側の都合で決まったタイミングで情報が届くのではなく、ライフサイクルの一角に入りながら生活を豊かにするメディアを生み出せないか。そういったアプリケーションなどもGlyphFeedsとして提供していきたいですね。

――生活者にとって、必要な情報を最適なタイミングで届ける仕組み作りに挑戦していきたいということですね。では、最後に新聞業界を超えて挑戦したいことについて教えてください。

GlyphFeedsの仕組みは、新聞社以外のメディア全般に活用できる

メディアが長期的にビジネスを持続できる環境を作る

宮原: GlyphFeedsの仕組みは、新聞社以外のメディア全般に活用できるので、出版系やWebメディアなどにも広げていけると考えています。また、文章を管理・活用するという点では、弁護士の業務や知財、特許の管理などにも応用できるのではないかと。

――そういう意味では、コミュニティ内でのノウハウ共有などに活用できそうですね。

山上: そうですね。フューチャー社内でもGlyphFeedsにパワーポイントなどの大量のドキュメントを取り込んで、検索性を高めるというトライアルをしたことがありますし、いろいろな可能性を探っていきたいです。

――GlyphFeedsが提供する価値の本質を考えると、新聞業界の枠を超えて、様々な業界で活用が広がっていくことを期待しています。今後の発展を楽しみにしています。ありがとうございました。

以上、フューチャーグループの重要テーマである「社会変革」を考えるためのコンテンツとして、GlyphFeedsの事例をお届けしました。テクノロジーを活用したビジネス変革が、業界全体の改革や地域創生のような社会変革にもつながっていく様がイメージできたのではないでしょうか。ぜひ、本記事を題材にフューチャーグループの未来について対話いただけたらと思います。

GlyphFeedsの仕組みは、新聞社以外のメディア全般に活用できる

トップに戻る